随筆銭形平次
ずいひつぜにがたへいじ
15 捕物小説は楽し
15 とりものしょうせつはたのし分量:約18分
書き出し:一捕物小説というものを、私は四百二三十篇は書いているだろう。その上、近ごろは毎月五六篇は書いているから、幸いに私の健康が続く限り、まだまだこの多量生産は止みそうもない。私が「銭形平次捕物控」という捕物小説を書いたのは、昭和六年ごろで、「オール読物」の創刊と同時であった。最初は勿論六回と十二回でよす積もりであったが、調子に乗って十何年か書き続け(その間半歳だけ休んだが)戦争末期のオールの廃刊までに、...