随筆銭形平次
ずいひつぜにがたへいじ
18 平次読む人読まぬ人――三人の政治家――
18 へいじよむひとよまぬひと――さんにんのせいしか――分量:約17分
書き出し:一吉田首相が「銭形平次」を読むとか読まないとかで、かなりうるさい問題を巻き起こした。吉田首相にとっては、随分迷惑なことであったに違いないが、「銭形平次」にとって、冷やかしの種にはなったが、良い宣伝にもなったことは確かである。かつて二十世紀のはじめの頃、ドイツで素晴らしい人気を博した、美しい歌い手のジェラルディン・ファーラーが、時の皇太子(後のカイゼル)と浮名を流し、一時は大変な評判になったことがあ...