銭形平次捕物控
ぜにがたへいじとりものひかえ
001 金色の処女
001 こんじきのしょじょ初出:「オール讀物」文藝春秋社、1931(昭和6)年4月号分量:約36分
書き出し:これは銭形平次の最初の手柄話で、この事件が平次を有名にしたのです。この頃お静はまだ平次の女房になっていず、ガラッ八も現われてはおりません。一「平次、折入っての頼みだ、引受けてくれるか」「ヘエ——」銭形の平次は、相手の真意を測り兼ねて、そっと顔を上げました。二十四五の苦み走った好《い》い男、藍微塵《あいみじん》の狭い袷《あわせ》に膝小僧《ひざこぞう》を押し隠して、弥蔵に馴れた手をソッと前に揃えます。...