銭形平次捕物控
ぜにがたへいじとりものひかえ
126 辻斬
126 つじぎり初出:「オール讀物」文藝春秋社、1941(昭和16)年10月号分量:約30分
書き出し:一「八、厄介なことになったぜ」銭形の平次は八丁堀の組屋敷から帰って来ると、鼻の下を長くして待っている八五郎に、いきなりこんなことを言うのです。「何かお小言ですかえ、親分」「それならいいが、笹野の旦那が折入っての頼みというのは、——近ごろ御府内を荒らし廻る辻斬《つじぎり》を捉《とら》えるか、せめて正体を突き止めろというのだ」「へッ、へエ——」ガラッ八の八五郎さすがに胆《きも》を潰《つぶ》したものか、...