銭形平次捕物控
ぜにがたへいじとりものひかえ
125 青い帯
125 あおいおび初出:「オール讀物」文藝春秋社、1941(昭和16)年9月号分量:約34分
書き出し:一その晩、代地のお秀の家で、月見がてら、お秀の師匠に当る、江戸小唄の名人|十寸見露光《とすみろこう》の追善の催しがありました。ちょうど八月十五夜で、川開きから三度目の大花火が、両国橋を中心に引っ切りなしに打揚げられ、月見の気分には騒々しいが、その代りお祭り気分は、申分なく満点でした。追悼《ついとう》といったところで、改まった催しではなく、阿呆陀羅経《あほだらきょう》みたいなお経をあげ、お互に隠し芸...