本作品は、紀行文であるが、著者が歌人であることから、紀行地の情景を読んだ句が数句掲げられている。東京近郊の里山の風景描写に句を合わせることで、雅趣溢れる文章になっているように思う。 本作品は、『狭山紀行』と題されている。『狭山』は、武蔵野の『狭山』であるが、本作品中に描かれている事物、地名などから思うに、現在の狭山市を意味する『狭山』ではなく、所沢市南西部に位置する“狭山丘陵”を著している。愚生も以前、本作品中にある『荒幡の富士』に行ったことがある。今は公園となり、句をひねる風情は遠くなってしまった。