怪談一夜草紙
かいだんいちやぞうし
初出:「日曜報知 第百四十六號」 1933(昭和8)年3月12日分量:約21分
書き出し:一お福さんという老女は語る。わたくしのような年寄りに何か話せと仰しゃっても、今どきのお若い方々のお耳に入れるような、珍らしい変わったお話もございません。それでも長いあいだには、自分だけには珍らしいと思うようなことが無いでもございません。これもその一つでございます。わたくしが十七の年——文久二年でございます。その頃、わたくしの家は本郷の千駄木坂下町、どなたも御存じの菊人形で名高い団子坂の下で、小さな...