「不幸」の感想
不幸
ふこう

梶井基次郎

分量:約11
書き出し:第二稿師走のある寒い夜のことである。閉め切った戸をがたごと鳴らしながら吹き過ぎる怖ろしい風の音は母親の不安をつのらせるばかりだった。その日は昼下りから冬の陽の衰えた薄日も射さなかった。雪こそは降り出さなかったが、その灰色をした雪雲の下に、骨を削ったような櫟《くぬぎ》や樫《かし》の木立は、寒い木枯《こがらし》に物凄い叫びをあげていた。それは冬になってからの初めての寒い日で、その忍従な母親にもあてのな...
更新日: 2024/04/18
19双之川喜41さんの感想

 夫の 放蕩 酒乱 女狂いのため 大阪から 東京に 左遷されて 失意の生活を 余儀なくされる家族の 有様が 嵐に揺れる 雨戸の鳴る音を 軸に 描かれている。 子供達の 帰宅が なぜか 大幅に遅れているので 焦燥感や 不安感に 捕らわれる 妻の心情が 部屋を 駆け巡る ねずみの 足音に 写される。このニ編が 習作かは あえて 詮索しなくとも 上質な 文と 感じた。