落穂
おちぼ
初出:「文章世界 第八卷第六號」1913(大正2)年5月1日分量:約25分
書き出し:水田《すいでん》のかぎりなく広い、耕地《こうち》の奥に、ちょぼちょぼと青い小さなひと村。二十五六戸の農家が、雑木《ぞうき》の森の中にほどよく安配《あんばい》されて、いかにもつつましげな静かな小村《こむら》である。こう遠くからながめた、わが求名《ぐみょう》の村は、森のかっこうや家並《やなみ》のようすに多少変わったところもあるように思われるが、子供の時から深く深く刻まれた記憶《きおく》のだいたいは、目...