新万葉物語
しんまんようものがたり
初出:「文章世界 第四卷第二號」1909(明治42)年2月1日分量:約13分
書き出し:からからに乾いて巻き縮《ちぢ》れた、欅《けやき》の落葉や榎《えのき》の落葉や杉の枯葉も交った、ごみくたの類が、家のめぐり庭の隅々の、ここにもかしこにも一団ずつ屯《たむろ》をなしている。まともに風の吹払った庭の右手には、砂目の紋様《もよう》が面白く、塵一つなくきれいだ。つい今しがたまで背戸山の森は木枯《こがらし》に鳴っていたのである。はげしく吹廻した風の跡が、物の形にありありと残っているだけ、今の静...