箸
はし
初出:「ホトヽギス 第十三卷第一號」1909(明治42)年10月1日分量:約48分
書き出し:一朝霧《あさぎり》がうすらいでくる。庭の槐《えんじゅ》からかすかに日光がもれる。主人《しゅじん》は巻《ま》きたばこをくゆらしながら、障子《しょうじ》をあけ放《はな》して庭をながめている。槐《えんじゅ》の下の大きな水鉢《みずばち》には、すいれんが水面《すいめん》にすきまもないくらい、丸《まる》い葉《は》を浮《う》けて花が一|輪《りん》咲《さ》いてる。うす紅《くれない》というよりは、そのうす紅《くれな...