三両清兵衛と名馬朝月
さんりょうせいべえとめいばあさづき
初出:「少年倶楽部」講談社、1931(昭和6)年6月号分量:約26分
書き出し:三両のやせ馬「馬がほしい、馬がほしい、武士が戦場で、功名《こうみょう》するのはただ馬だ。馬ひとつにある。ああ馬がほしい」川音清兵衛《かわおとせいべえ》はねごとのように、馬がほしいといいつづけたが、身分は低く、年は若《わか》く、それに父の残した借金のために、ひどく貧乏《びんぼう》だったので、馬を買うことは、思いもおよばなかった。清兵衛は、毛利輝元《もうりてるもと》の重臣《じゅうしん》宍戸備前守《しし...