新書太閤記
しんしょたいこうき
02 第二分冊
02 だいにぶんさつ初出:太閤記「読売新聞」1939(昭和14)年1月1日~1945(昭和20)年8月23日分量:約535分
書き出し:寧子《ねね》の胸《むね》「こひ!」浅野又右衛門《あさのまたえもん》は、家に帰ると、すぐ大きな声で、妻の名をどなった。於《お》こひは、あわただしく、出迎えて、「お帰りなさいませ」「酒の支度せい」いきなりいって——「お客を拾うて来たぞ」「それはそれは。どなた様でいらっしゃいますか」「娘の友達だ」「ま……」と、後からはいって来た藤吉郎《とうきちろう》の姿を見て、「木下様でございますか」「こひ」「はい……...