虎の牙
とらのきば
初出:「少年」光文社、1950(昭和25)年1月号~12月号分量:約240分
書き出し:魔法博士このふしぎなお話は、まず小学校六年生の天野勇一《あまのゆういち》君という少年の、まわりにおこった出来事からはじまります。その出来事というのは、一つはたいへんゆかいな、おもしろくてたまらないようなこと、もう一つは、なんだかゾーッとするような、えたいのしれないおそろしいことでした。ある春の日曜日、天野勇一君は、おうちのそばの広っぱで、野球をして遊んでいました。場所は東京の世田谷《せたがや》区の...