鉄塔の怪人
てっとうのかいじん
初出:「少年」光文社、1954(昭和29)年1月号~12月号分量:約209分
書き出し:のぞきカラクリ明智《あけち》探偵の少年助手、小林芳雄《こばやしよしお》君は、ある夕方、先生のおつかいに出た帰り道、麹町《こうじまち》の探偵事務所のちかくの、さびしい町を歩いていました。麹町には、いまでも焼けあとの、ひろい原っぱがのこっています。かたがわは、草のはえしげった原っぱ、かたがわは、百メートルもつづく長いコンクリートべい。もう、うすぐらくなったその町には、まったく人どおりがありません。気味...