ツンドラへの旅
ツンドラへのたび
初出:「中央公論」1942(昭和17)年1月分量:約23分
書き出し:十月の初め、急に樺太《からふと》〔サハリン〕へ行くことになった。目的は、樺太の北、敷香《しすか》〔ポロナイスク〕の町近いあるツンドラ地帯で、冬期間の凍上《とうじょう》を防止したいという問題が起って、その予備調査をしようというのであった。一行は某省のA技師と、私と、私の方で凍上の実験を主としてやっているS君との三人であった。十月の宗谷《そうや》海峡は、もう海の色も冷《つめた》く、浪《なみ》がざわざわ...