新書太閤記
しんしょたいこうき
05 第五分冊
05 だいごぶんさつ初出:太閤記「読売新聞」1939(昭和14)年1月1日~1945(昭和20)年8月23日分量:約558分
書き出し:とらと虎《とら》湖畔の城は、日にまし重きをなした。長浜《ながはま》の町には、灯のかずが夜ごとのように増《ふ》えてゆく。風土はよし、天産にはめぐまれている。しかも、城主に人を得て、安業楽土《あんぎょうらくど》の国とは、おれたちのことなれと、謳歌《おうか》せぬ領民はなかった。ここで一応。秀吉《ひでよし》の家族やら家中の人たちを見覚えておくのも無益でなかろう。なぜなら、彼の幸福は今の家庭にあるし、彼が一...