新書太閤記
しんしょたいこうき
07 第七分冊
07 だいななぶんさつ初出:太閤記「読売新聞」1939(昭和14)年1月1日~1945(昭和20)年8月23日分量:約571分
書き出し:雛《ひな》の客《きゃく》備前《びぜん》岡山の城はいま旺《さか》んなる改修増築の工事にかかっている。ここの町を中心として、吉備平《きびだいら》の春を占めて、六万の軍馬が待機していた。「いったい戦争はあるのかないのか」熟《う》れる菜《な》の花《はな》を見、飛ぶ蝶に眠気《ねむけ》を誘われ、のどかな町の音響や、城普請《しろぶしん》の鑿《のみ》の音など聞いていると、将士は無為《むい》に飽いて、ふとそんな錯覚...