旗本退屈男
はたもとたいくつおとこ
04 第四話 京へ上った退屈男
04 だいよんわ きょうへのぼったたいくつおとこ分量:約64分
書き出し:一その第四話です。第三話において物語ったごとく、少しばかり人を斬り、それゆえに少し憂欝になって、その場から足のむくまま気の向くままの旅を思い立ち、江戸の町の闇から闇を縫いながら、いずこへともなく飄然《ひょうぜん》と姿を消したわが退屈男は、それから丁度十八日目の午下《ひるさが》り、霞に乗って来た男のように、ふんわりと西国《さいごく》、京の町へ現れました。——春、春、春。——京の町もやはり青葉時です。...