文章の一形式
ぶんしょうのいちけいしき
初出:「作品 第六巻第九号」1935(昭和10)年9月1日分量:約13分
書き出し:私は文章を書いていて、断定的な言い方をするのが甚だ気がかりの場合が多い。心理の説明なぞの場合が殊に然《そ》うで、断定的に言いきってしまうと、忽《たちま》ち真実を掴《つか》み損ねたような疑いに落ちこんでしまう。そこで私は、彼はこう考えた、と書くかわりに、こう考えたようであった、とか、こう考えたらしいと言う風に書くのである。つまり読者と協力して、共々言外のところに新《あ》らたな意味を感じ当てたいという...