「柘榴の花」の感想
柘榴の花
ざくろのはな

三好達治

分量:約6
書き出し:万物の蒼々たる中に柘榴の花のかつと赤く咲きでたのを見ると、毎年のことだが、私はいつも一種名状のしがたい感銘を覚える。近頃年齢を重ねるに従つて、草木の花といふ花、みな深紅のものに最も眼をそばだて愛着を感ずるやうに覚えるが、これはどういふ訳であらう。その深紅のものの燃上るやうなものといふ中でも、柘榴《ざくろ》の朱はまた格別の趣きがあつて、路傍などでこの花を見かけて眼を驚かせるその心持の中には、何か直接...
更新日: 2018/10/06
大宇宙の少年さんの感想

私は金木犀の匂いを嗅ぐと1年たったなぁと思います。それが筆者にとっては柘榴の花なのだろうかと勝手に思いました。 そして戦時の世の中で出征した若者から武人の心持ちを感じ、自然の中から豊かな文章を生み出す筆者の感性の鋭さを感じました。最後の一文が好きです。

更新日: 2016/07/05
芦屋のまーちゃんさんの感想

太宰治にもあったことだが、 三好達治、彼の心の内にもまた戦争があるのか!!! 若者達が戦地へ出征していく。 毎年、柘榴の花を見ると、平穏でない世界で比較的平穏に暮らしている自分 を考えさせられる。 自分の心は沈滞しているが強烈な自然美が生きているという実感を与えてくれる。 達治は「閑談」とあえて表現しているが、自然を見て何かを感ずる心、万葉の頃の短歌に始まり、近代の俳句、川柳、詩などの文芸は、戦地にいる武人たる若者達の心にもある。 若き平敦盛は(青葉の)笛をわざわざ取りに戻ったが故に、熊谷直実に殺されたのだ。 それが、日本人の心情なのだ。