「九月一日」の感想
九月一日
くがつついたち
初出:「随筆」1924(大正13)年1月号

水上滝太郎

分量:約39
書き出し:一八月三十一日の夕方、朔日《ついたち》から学校の始まるちいさい子供達を連れて、主人夫婦は東京に帰る事になり、由井ヶ浜の曲淵《まがりぶち》の別荘には、九人の人数が残る事になった。長男の一郎と、長女の甲子と、次女の乙子と、夫人の里の遠縁の者の娘で甲子や乙子の世話をする養子《ようこ》と、一郎の同級生の澤と、女中の延《のぶ》と鉄と、別荘番のじいやとばあやがいた。外《ほか》には英国種のポインタアの年をとって...
更新日: 2019/09/17
ハルチロさんの感想

この作品は、南関東大地震(関東大震災)により、青春の悲喜交々に揺れる若者達が、翻弄される物語です。関東大震災は、東京を舞台として描かれている作品が多いですが、本作品は、神奈川県の鎌倉が舞台となっています。関東大震災の震央は相模湾とされており、神奈川県下の震度、倒壊家屋数は東京を上回っています。鎌倉周辺は、皇室関係者、官人、文人の別荘地が多く、震災の犠牲となった皇室関係者、官人、文人は多数いらっしゃいました。物語中の人物もまた、被災し、生死が別れたことを描写されています。現実には、本作品の描写を越えるものだったかと思います。

更新日: 2019/09/01
19双之川喜41さんの感想

 夏も 終わりになり  別荘仕舞いをして 人々が 引き上げ始めた頃 鎌倉も  震災に 見舞われた。 若者の 淡い 恋は 大津波に会うこともなくて ほんの少し 希望が 持てたかもしれない。 「避暑地の出来事」という映画が  頭をよぎった。