谷崎の小説は技巧の背後に人間の真の姿が描かれている。人生とはこういうものである。
最初は平安時代の色好みで有名な平中の話から始まり老大納言が時の左大臣時平に美女の誉れ高い妻を簒奪されるという様に流れる。後半はその老大納言が苦しみ抜き仏にすがるが悟り切れずにその生涯を終える。一切のそれを見ていた一子の母への思慕。最後の場面は涙無しには読めない。
しげもと(滋幹)の 母恋物語りではなく 美人の誉れたかい母親の色恋沙汰を 真ん中に据える。 寸止め下ネタのようなくだりが 散りばめられてあり 退屈は 余りしない。 舞台化されたのも そうだろうなとは 想わせる。
平中、時平、菅丞相など歴史上の人物が現れますが 個人的な個人的な母への追慕の物語に思えます。 夕暮れの月光の下、仄白く絶え間なく散り乱れる花に惹き込まれる人。