舞台は大阪市中央区道修町。今もレトロな建物がいくつかあり、趣のある町だ。 薬のまちでもある。武田薬品工業、塩野義製薬、田辺三菱製薬の本社もある。 主人公春琴の家も薬種商を営む。 春琴は幼くして失明するが、三味線を極める。彼女の身の回りのお世話を丁稚奉公の佐助が行うが、この佐助、めちゃくちゃいい男である。 佐助は皆が寝静まった後に三味線の練習こっそり行い、春琴の両親は彼女自身のためにもなるかと佐助に三味線を教えるよう仕向ける。 今でこそパワハラで訴えられてもいいだろう。当時は折檻込みの厳しい教えが有り難いと思われた時代なのだろうか、若しくは佐助が春琴に恋をしていたからだろうか、春琴の過酷な指導に耐える、耐えまくる。 泣き叫ぶ、佐助。その状況が目に浮かんできて辛い。鵙屋で働くみんなと共に佐助を心配してしまう。 春琴は三味線が上手いのと性格からか周りから嫉妬や非難を受けやすい。辛く当たりながらも佐助にだけは甘えられて心を開いていた。春琴の恋心も佐助は受け止め、周囲には内緒にしていたのだろう。何度も書くが、なんといい男なのだろう。 そして、ラストに佐助の献身が極まる。 師弟関係、恋愛関係を超えた究極のもの。 春琴のプライドを守り抜き、春琴の芸や技に最も近づくことが出来た。 雲雀が高く昇って行けるのも晴れた空があるから。 究極の師弟愛であり、究極の恋愛。 美しい?逆に怖い? 天龍寺の和尚みたいにどう思う?といろんな人に問いたくなる。
20年ほど昔に読んだ作品だが、久しぶりに読み直して深い感動を覚える。春琴と佐助の師弟関係、深い愛情、信頼、肉体関係。一言で言い表せない不思議な関係性に狂気を感じながらも、魅了された。ひたすら狭い世界の出来事なのに、かえって深く美しく簡潔で、夢想的だった。
これぞ谷崎文学の最高傑作と思うのは私だけではないでしょう 句読点を極限まで削減した浪曲にも似た無駄のない構成、佐助はまさに谷崎の理想像でしょう
佐助の春琴への思いが信仰じみててよかった。谷崎潤一郎初めて読んだけど面白いな。でも句読点の位置おかしくない?青空文庫だからか分からないけど。今度紙の本で確認しよ。
生きることの大切さを考えさせられるような作品です
何度読んでも美しい物語
洗練された文体と狂気ともいえぬ何かとしかおおかた記せない
大谷崎 あらためて凄さおもいしる
古い文体なのに、なぜか読みやすい。
盲目なった春琴抄を思う佐助の思いや、いか程なるかは谷崎潤一郎の筆によって鮮やかに描かれる。
佐助の師匠であり主人でもある盲目の女性への深い愛情、そして主人である春琴のひねくれてはいるかもしれないが同じく純粋な佐助への愛に強く心を打たれた。 結婚しなかったのも「お師匠さん」「佐助」という呼び方も、身分の差を考えると当時としては特に不自然はないのではないか。 鶯や春琴の描写にも谷崎の強烈な美意識を感じられる。