恋人と引き裂かれて、頭のおかしくなっちゃった女の子と家族のお話。 始めはよく分からなかったけど、だんだんと仔細顕になっていく。ミステリーみたいで、読み進めていくのが楽しかった。 雪子は最終的に病美人から鬼の形相になってしまう。名前の恥ずかしければ、とか遠慮せずに入院していたらとか考えてしまうのだけれど、それもどうなんだろう?明治時代だろうし、逆に弱ってしまったりするのかな。 でも、やっぱり1番やるせないのは植村の自殺。こんなになってるんだから、「植村も可愛相な事でした」とか言ってないで、会わせてあげなよ!とかハラハラしていたのに、「遺書」の段階で絶句。もう本当に取り返しがつかない。てっきり「可愛相な事」=退学とか他の娘と無理矢理結婚させられたとかだと思ってたのに。雪子とは同世代だから余計響いた。そりゃ、精神病むよ。 それに、「私が、私が、申さないが悪う御座りました、兄の言ふてはをりまするけれど」とあるから、植村のことが本当に本当に大好きで、だから、軽はずみにも許嫁がいることを隠しちゃったのかな。嫌われたくもなくて、その後もずっと必死に隠しちゃったのかな。でも、そのせいで植村は死んじゃって、責任も感じちゃってる。植村も植村で、交際の盛り上がってる時に知ってしまって、余計世の中が悲しくなっちゃったのかな。もし、雪子のお家や許嫁から直接伝えられて、示談金とかが渡されていたらもう両者ともに悲惨すぎる。 この後の展開で、雪子の「植村、ゆるし給ヘ」、「学校、手紙、我罪、おあとから行きまする、恋しき君」で心が震えた。ほぼ文章じゃん。「何処へか行こう、行こうと仰やる」だけで引っ越す行動力がたるなら気づいてあげなよ!と心底思う。引っ越す以前からずっと言ってることなのに。でも、それも分からぬ振りなのかな。井戸に蓋してるし。 あと、結末の「あはれ門なる柳に秋風のおと聞こえずもがな」って、雪子は夏を越せなかったのかな。「空蝉はからを見つつもなぐさめつ」もそれを分かってて看護したってこと?で、題名とは「うつせみ」の表記が違う。「空蝉」が家族とか許嫁ならまた悲しいなと思った。
戀の一途な有り様を 一葉は 示したかったのだろう。 狂おしいほどの恋慕は 一線を超え あちら側の人となってしまう。 正気と狂気の狭間に 真実ありと感じた。
古文調だからこその雅な世界観の表れ。味わい深いですね。他の作品でもそうですが。
樋口一葉の空蝉は、最後のとりで、空蝉を掛けているが、やはり、古文調では、現代文学として楽しむことはできない!