「霧の蕃社」の感想
霧の蕃社
きりのばんしゃ
初出:「文学界」1939(昭和14)年12月号

中村地平

分量:約74
書き出し:一台湾の北から南へかけて、まるで牛の背骨のように高く、長く連《つらな》っている中央山脈の丁度まんなか辺りに、霧社という名前で呼ばれている有名な蕃社《ばんしゃ》がある。蕃社は北の方の合歓《ごうかん》山から延びた稜線と、南の方水社大山から東北に延びた稜線とが相合うところに、ひとりでに出来あがった高台の上に在る。高さは海抜四千二十九尺。脚もとはるか低くには濁水渓の源流が岩石の間に水しぶきをたてながら流れ...
更新日: 2018/09/20
ハルチロさんの感想

ドキュメンタリー小説のような作風ですが、1930年に起こった抗日紛争である「霧社事件」を題材のした作品です。この作品の題材となった事件が起きた当時、台湾は、日清戦争の後に清から譲渡されて30年以上、大日本帝国に統治されていました。この作品を読むに、統治国に対する30年の積年の恨みが爆発した状況が、よく分かります。この作品を読むことができて、良かったです。