桂浜
かつらはま
初出:「西日本新聞」1955(昭和30)年8月9日夕刊分量:約3分
書き出し:漱石の俳句の中に寅彦桂浜の石数十顆を送る涼しさや石握り見る掌という句がある。如何にも涼しさのあふれる名品である。そしてその涼しさの中に、寅彦の漱石に対する思慕の情と、漱石のそれに応えるこころとが、感じとれる。この句は、明治三十二年の作で、当時漱石は五高で英語を教えていて、寅彦はその愛された生徒の一人であった。この年の夏、寅彦は五高を卒業して、東大の物理学科に入学した。桂浜の石を贈ったのは、多分その...