海城発電
かいじょうはつでん
初出:「太陽 第二卷第一號」1896(明治29)年1月5日分量:約37分
書き出し:一「自分も実は白状をしようと思ったです。」と汚れ垢《あか》着きたる制服を絡《まと》える一名の赤十字社の看護員は静《しずか》に左右を顧みたり。渠《かれ》は清国《しんこく》の富豪|柳《りゅう》氏の家なる、奥まりたる一室に夥多《あまた》の人数《にんず》に取囲まれつつ、椅子に懸《かか》りて卓《つくえ》に向えり。渠を囲みたるは皆軍夫なり。その十数名の軍夫の中に一|人《にん》|逞《たく》ましき漢《おのこ》あり...