モノグラム
モノグラム
初出:「新小説」春陽堂、1926(大正15)年6月分量:約30分
書き出し:私が、私の勤めていたある工場の老守衛(といっても、まだ五十歳には間《ま》のある男なのですが、何となく老人みたいな感じがするのです)栗原《くりはら》さんと心安くなって間もなく、恐らくこれは栗原さんの取って置きの話の種《たね》で、彼は誰にでも、そうした打開《うちあ》け話をしても差支《さしつかえ》のない間柄《あいだがら》になると、待兼《まちか》ねた様に、それを持出すのでありましょうが、私もある晩のこと、...