悲しくも美しい物語。江戸話だからこその余韻は何とも言えない。好きな話しです。
山本周五郎は短編を幾つか読んだだけだが、そのいづれも読んだ後清々しい気分が残った(出来すぎだと言う意見もあるが•••)。だが「おさん」は尻切れトンボのようで何を言いたいのか理解出来なかった。
「愛」の中に「疑」が生じたとき、人はどのような選択をするのか?きっと伊三は「神」であったのだろう。
山本周五郎がこの手の女を描くのは珍しいような気がする。女にモテる腕のいい職人でうすなさけの主人公が、「頭のてっぺんからつま先まで可愛さでできている]女と出会う。 典型的なファムファタールに滅ぼされる男と違って、別の女が追いすがってくるし、主人公がそれを受け入れるところが、暗く寂しい諦念を感じる。