笠折半九郎
かさおりはんくろう
初出:「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社 、1941(昭和16)年3月号分量:約35分
書き出し:失火一喧嘩《けんか》は理窟《りくつ》ではない、多くはその時のはずみである、理窟のあるものならどうにか納りもつくが、無条理にはじまるものは手がつけられない、笠折半九郎と畔田《くろだ》小次郎との喧嘩がその例であった。二人は紀伊家の同じ中小姓で、半九郎は西丸|角櫓《すみやぐら》の番之|頭《かしら》を兼任し、食禄《しょくろく》は三百石、小次郎は二百五十石を取っていた。……年齢は半九郎の方が二歳年長の二十七...