落葉の隣り
おちばのとなり
初出:「小説新潮」1959(昭和34)年10月分量:約74分
書き出し:一おひさは繁次《しげじ》を想っていた。それは初めからわかっていたことだ。ただ繁次が小心で、おひさの口からそう云われるまで、胸の奥ではおひさを想いこがれながら、おひさは参吉を恋しているものと信じ、そのために心を磨り減らしているのであった。「なんでもないよ、繁ちゃん」と参吉が云った、「大丈夫だ、心配しなくってもいいよ」これが繁次と参吉と、そしておひさをむすびつけるきっかけになったのだ。繁次と参吉はおな...