秋の駕籠
あきのかご
初出:「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年12月号分量:約45分
書き出し:一魚金の店は北八丁堀の河岸にあった。二丁目と向き合った角で、東と南の両方から出入りができた。魚金は一|膳《ぜん》めしと居酒を兼ねた繩のれんであるが、造作もちょっと気取っているし、いつも掃除がゆき届いていて、さっぱりとした洒落《しゃ》れた感じの店であった。板場のほうは主人の金助が受持ち、店は娘のお梅が二人の小女《こおんな》を使ってやっていた。金助は四十五であった。彼はもと深川で魚屋をしていたが、お梅...