落ち梅記
おちばいき
初出:「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1949(昭和24)年7月分量:約79分
書き出し:一「すまない、そんなつもりじゃあなかったんだ、酔ってさえいなければよかったんだが、どうにもしようがない、本当にすまないと思ってるんだ」半三郎はこう云って頭を垂れた。不健康な生活をそのまま表明するような蒼《あお》ざめた艶《つや》のない顔である、しまりなくたるんだ唇、ぶしょう髭《ひげ》の伸びている尖《とが》った顎《あご》、焦点のきまらない濁った眼、すべてがいやらしいくらい汚れた感じであった。——金之助...