嫁取り二代記
よめとりにだいき
初出:「婦人倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月号分量:約31分
書き出し:一「伯父上お早うござる」自慢の盆栽の手入れをしていた牧屋勘兵衛《まきやかんべえ》はそう声をかけられて振返った。「良いお日和でございますな」調子のいい愛想笑いをしながら、甥《おい》の直次郎《なおじろう》がこっちへやってくる。勘兵衛は眼鏡越しにじろりと睨《にら》んで、「——えへん」と威《おどし》の空咳《からぜき》をした。機嫌執りをしてもその手は喰わぬと云う意味である、ところが相手はいっこう感じない様子...