楯輿
たてごし
初出:「日本士道記」晴南社創立事務所、1944(昭和19)年12月分量:約22分
書き出し:一神原与八郎は豪快な生きかたを好んだ。からだはどっちかというと小がらなほうだが、肩腰の頑丈な逞《たくま》しい骨ぐみだし、眉のあがった双眸《そうぼう》の光りのするどい、いつも片方へひき歪《ゆが》めている唇《くち》つきなど、負けぬ気のつよさと軒昂《けんこう》たる意気をよくあらわしていた。起ち居ふるまいも言葉つきも颯爽《さっそう》として、大事に惑わず小事に拘泥せずという態度を常に崩さない、かくべつ大言壮...