討九郎馳走
とうくろうちそう
初出:「内蔵允留守」成武堂、1942(昭和17)年3月分量:約27分
書き出し:一「しばらく、しばらくお待ち下さい」兼高討九郎はそわそわしながら急に面をあげて云った、「ただいまお達しの御意、いまいちど仰せ聞けられとうございます」「その必要はない」老職水野主馬は、討九郎がそう云うだろうとかねて期していたようすで、あらぬ方へ眼をやりながら云った、「きたる六月より徒士《かち》組支配を免じ、馳走番仰せつけらる、それだけのことだ、わかったら退ってよろしい」「それは、その、御上意でござい...