鉢の木
はちのき
初出:「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年6月号分量:約35分
書き出し:一そのような運命が一夜のうちにめぐって来ようとは思いも及ばぬことであった。もしも半日まえにそう予言する者があったとしても、おそらくかれは一笑に付してかえりみなかったに違いない、すべての事情がそれほどゆきづまり、心は絶望におちていたのである。……その運命の時からちょうど半日まえ、四郎兵衛は藪下《やぶした》の家で賃取りの箭竹《やだけ》つくりをしていた。家といっても柱は歪《ゆが》み壁は落ち、床も框《かま...