初蕾
はつつぼみ
初出:「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年1月号分量:約45分
書き出し:一「花はさかりまでという、知っているだろう」「…………」「美しいものは、美しいさかりを過ぎると忘れられてしまう、人間いつまで若くていられるものじゃない、おまえだってもう十八だろう、ふじむら小町などと云われるのも、もう半年か一年のことだ、惜しまれるうちに身の始末をするのが本当じゃあないか」「それはわかってますけれど」お民《たみ》は客の盃《さかずき》に酌をしながら、ふと考えるような眼つきになった。「身...