百足ちがい
ひゃくあしちがい
初出:「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年8月分量:約74分
書き出し:一江戸の上邸《かみやしき》へ着任した秋成《あきしげ》又四郎は、その当座かなり迷惑なおもいをさせられた。用もないのにいろいろな人が話しかける。役部屋にいると覗《のぞ》きに来る者がある。御殿の出仕《しゅっし》にも退出にも、歩いていると通りすがりの者が、すれちがいざま同伴者に、「あれだあれだ、あれだよ、百足《むかで》ちがい」などと囁《ささや》く。するとその同伴者が、「あれかい、へえ、そうかい、あんな男が...