水戸梅譜
みとばいふ
初出:「芸能文化」1942(昭和17)年11月号分量:約33分
書き出し:一寛文五年の秋のある日、徳川|光圀《みつくに》の水戸の館《やかた》へ、貧しげなひとりの浪人ものが、仕官をたのむためにおとずれた。衣服も袴《はかま》もつぎはぎのあたった木綿ものであったが、よく洗って折目がついていた、としは三十二三であろうか、頬のあたりに辛労のかげがみえるけれど、まぎれのない眉つきがひと眼をひいた、月代《さかやき》もきれいに剃《そ》っていた、執事の鈴木|主税《ちから》がかれに会った。...