やぶからし
やぶからし
初出:「週刊朝日増刊」朝日新聞社、1959(昭和34)年7月分量:約58分
書き出し:一祝言の夜は雪になった。その数日間にあったこまかいことは殆んどおぼえていないが、盃《さかずき》の済んだあとまもなく、客の誰かが「とうとう雪になった」と云い、それから、宴席がひときわ賑《にぎ》やかになったことと、その雪が自分の将来を祝福してくれるように思えたこととは、いまでも、いろいろな意味で、鮮明に思いだすことができる。——ようやくおちつく場所ができた。わたくしは綿帽子の中でそう思った。——これが...