雪の上の霜
ゆきのうえのしも
初出:「面白倶楽部」光文社、1952(昭和27)年3月~4月号分量:約66分
書き出し:一その仕事は簡単なものであった。街道に立っていて、荷物を(重たそうに)持っている旅人が来たら、あいそよく呼びかけて、こう云うのである。——次の宿《しゅく》までその荷物を持ちましょう。つまり、馬や駕籠《かご》に乗るほどではないが、歩き草臥《くたび》れて少しばかり荷物が厄介になった、という客のために、馬や駕籠よりも安価な駄賃で、荷物を持ってやる。というわけである。……これはもちろん三沢伊兵衛の新案では...