四年間
よねんかん
初出:「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号分量:約46分
書き出し:一「ここはどうです、痛みますか」医者はそう云いながら静かにゾンデを動かした、「やっぱり痛まない、そう……ここはどうです」信三は医者の顔を見ていた。まだ若くて臨床の経験には浅いようだ、治癒《ちゆ》の困難な症状に当たるとそれが表情にあらわれずにいない、今も彼の額には汗がにじみ出ているし、さりげない態度をとろうとしながら困惑の色が隠しきれなかった。今日までにもう三回、X線写真も撮って見、血液や尿の各種の...