良人を私闘にかかわらせたくないという妻のかたい決意、それが良人を苦しめる立場に追いやることになってしまっても、自分の考えは正しかったと自分を失わなかった妻として、また、ひとりの人間としての強さを感じた。 結果的には良人も救われることになって、読者も救われ安堵する。 夫唱婦随も本当は妻がしっかりと自分を見失わないところに本当の意味があるのかもしれない。 武家社会とは言え妻の役割の重さを気づかされた。従順とは無思慮に夫に従うという意味ではない。これは現代にも通用しそうだ。
法の遵守は言い訳で、本音は夫への執心。理性よりも感情で動いた妻。男の矜持は言い訳で、大事に到らず一件落着への安堵か。義理情けよりも秩序回復を喜んだ良人。結果オーライは能天気。
一気に読める、時を忘れる