日本婦道記
にほんふどうき
墨丸
すみまる初出:「婦人倶楽部」大日本雄辯會講談社、1945(昭和20)年9月分量:約40分
書き出し:一お石《いし》が鈴木家へひきとられたのは正保《しょうほう》三年の霜月のことであった。江戸から父の手紙を持って、二人の家士が伴って来た、平之丞《へいのじょう》は十一歳だったが、初めて見たときはずいぶん色の黒いみっともない子だなと思った。「お石どのは父上の古いご友人のお子です」そのとき母はこう云って彼にひきあわせた、「ご両親ともお亡くなりになって、よるべのないお気のどくな身の上です、これからは妹がひと...