日本婦道記
にほんふどうき
風鈴
ふうりん初出:「婦人倶楽部」大日本雄辯會講談社、1945(昭和20)年11月~12月分量:約36分
書き出し:一妹たちが来たとき弥生《やよい》はちょうど独りだった。良人《おっと》の三右衛門《さんえもん》はまだお城から下らないし、与一郎も稽古所から帰っていなかった。二人を自分の部屋へみちびいた弥生は縫いかけていた物を片つけ、縁側に面した障子をあけた。妹たちがきっと庭を見るだろうと思ったので、けれども妹たちはなにやら浮き浮きしていて、姉のこころづかいなとまるで眼にいらぬようすだった。「きょうはお姉さまにご謀反...