日本婦道記
にほんふどうき
春三たび
はるみたび初出:「婦人倶楽部」大日本雄辯會講談社、1943(昭和18)年4月分量:約33分
書き出し:一「今夜は籾摺《もみす》りをかたづけてしまおう、伊緒《いお》も手をかして呉《く》れ」夕食のあとだった、良人《おっと》からなにげなくそう云われると、伊緒はなぜかしらにわかに胸騒ぎのするのを覚え、思わず良人の眼を見かえした。夕方お城からさがって来たのを出迎えたときにも、いつもはそこで大剣だけをとってかの女にわたすのに、その日にかぎって自分で持ったままあがった、顔つきもなんとなく違ってみえたし、高頬のあ...