日本婦道記
にほんふどうき
不断草
ふだんそう初出:「婦人倶楽部」大日本雄辯會講談社、1943(昭和18)年5月分量:約29分
書き出し:一「ちょうど豆腐をかためるようにです」良人《おっと》の声でそう云うのが聞えた。「豆を碾《ひ》いてながしただけでは、ただどろどろした渾沌《こんとん》たる豆汁《まめじる》です、つかみようがありません、しかしそこへにがりをおとすと豆腐になる精分だけが寄り集まる、はっきりとかたちをつくるのです、豆腐になるべき物とそうでない物とがはっきり別れるのです」「ではどうしてもにがりは必要なのだな」それはお邸の与市《...