赤ひげ診療譚
あかひげしんりょうたん
05 徒労に賭ける
05 とろうにかける初出:「オール読物」1958(昭和33)年9月分量:約47分
書き出し:一「病人たちの不平は知っている」新出去定《にいできょじょう》は歩きながら云った、「病室が板敷で、茣蓙《ござ》の上に夜具をのべて寝ること、仕着《しきせ》が同じで、帯をしめず、付紐《つけひも》を結ぶことなど、——これは病室だけではなく医員の部屋も同じことだが、病人たちは牢舎《ろうや》に入れられたようだと云っているそうだ、病人ばかりではなく、医員の多くもそんなふうに思っているらしいが、保本はどうだ、おま...